生きるのが下手くそなエッセイ

人生に悩みまくりの僕カシコが、エッセイやコラムを気が向いたときに書いていきます

今年初めてのプールに行ってきた

ここ数週間、夏バテで体調を崩していた。夏バテなんていうと、暑さにやられただけのようにも感じるけど、多分症状としてはもっと酷かった。常にお腹の調子が悪く、朝起きた途端に襲ってくるのは体のだるさ、しまいには夜になると頭痛が起きる。途中で異変に気づき、症状で検索したら、自律神経の乱れだろうということがわかった。夏バテがきれいに悪化したようだ。

自律神経の整え方には様々なものがある。ちゃんとした食事をとるとか、しっかり睡眠を取るとか。確かに最近、アニメやドラマを見て夜更かし気味だったので、まずは睡眠から改善することにした。毎日7時間程度は寝るようにしたら、途端に頭痛が治り、体のだるさも軽減された。やっぱり睡眠って大事なんだと、これまでに何度も経験した実感を得た。

ただお腹の調子だけが治らなかった。食べるものは消化の良いものにしているし、間食も避けるようにした。ただ、お腹のあたりがずっと気持ち悪かったり、下痢が治らなかったりした。正直僕は食べることが人生の楽しみなので、この症状が一番辛かった。

この症状を改善するためには、追加で何かの対策を取らねばならない。となると…。結果、選ばれたのは運動だった。運動といっても外は鬼のように暑く、下手したら熱中症にもなりかねない。そこで思いついたのが水泳だった。

水泳は小学生のときに習い事としてやっていた。といっても、喘息持ちの僕にとってそれは呼吸器官の強化という側面が強かった。確かに水泳を始めるまでの僕は、喘息の影響を強く受けていた。休み時間にみんなでサッカーなんてした際には、喘息がひどくなり、そのまま保健室に駆け込んだものだった。

ただそれが嫌なことではなかった。もちろん喘息は苦しかったものの、今にも倒れそうになるというわけでもない。それでも呼吸が荒くなるのは周りから見れば結構なインパクトだったので、保健室に行きやすかった。僕にとって喘息は保健室に行けるパスポ�� �トのようなものだった。みんなが授業を受けている間、僕は保健室で保険の先生と話をした。どんな話をしたかなんて全然覚えてないけど、その時間は間違いなく僕だけの特別な時間だった。

そんなパスポートも水泳に通ってからは使うことがなくなっていった。実際に効果はてきめんで、喘息を気にすることなく遊べることが普通になっていた。ただ水泳自体は余り上手くなく、同時期に入った友達とは差がついていった。みんなが中央のコースで泳ぐ中、僕だけが右側のコースで泳いでいたこともあった。

そんな水泳に、今日久しぶりに行った。もちろん小学校を出てからも何度も水泳自体は行っているけど、それでも1年以上、プールに来ることはなかった。地元のプールに着くと、そこには注意書きが。新型コロナの対策で、コースごとに泳げる方向が決められていたりした。ちょっと泳ぎにくそうだななんて思いながら、僕は中に入っていった。

ストレッチも程々にし、早速プールに入る。温度はぬるめで、ちょうど良かった。まずは慣らしとして、ウォーキング。歩きながら、久々のゴーグルのつけ具合をチェックする。ちょっと汚れているけど、問題なく使えそうだ。

程なくして、遊泳のコースに移動し、前を見る。時間的にあまり人もおらず、優雅に泳げそうだ。久々の泳ぎだし、まずはゆっくりといこう。そう思い、息を吸い込む。

ちゃぷ

僕が水の中に潜る音を最後に、周りは静かになる。そのまま足に力を込め、壁を思いっきり蹴り飛ばす。体が水のかたまりを突き破るようにして、前に進んでいく。少し勢いが落ちてくると、僕は手を使って、さらにかたまりをこじ開ける。グイッ。体がさらに前に進んだ。僕は息をするため、顔を上げる。外からは眩しい夕日が差し込んでいて、僕の吸う空気を、暖かい色に変えていた。

無我夢中で泳いだ。クロールをしたり、平泳ぎをしたり。途中で鼻に水が入って咽びながらも、壁をけって、突き進むことを繰り返した。気づ�� �ば、いつも使わない腕の筋肉がサインを出し始めていた。筋肉痛になるんだろうなぁとぼんやり考えながら、僕は水の中を進んだ。

ふと顔を上げ、時計を見た。まだ5分しか経っていなかった。泳ぐってこんなにも密度濃かったっけ?ちょっと動揺しながらも考えた。今日の目標は最低30分。あとこれを5回は繰り返すことになる。これは先が長くなりそうだ。

ある程度泳ぐのを繰り返していると、泳ぎながら考えることをし始めた。これも僕のよくやるクセみたいなものだ。「あー泳ぐのってヒマだなぁ。」これがスタートの合図となる。ヒマだなと考えた瞬間に、そこからとめどなく思考があふれてくる。腕や足が動いて、体は前に進んでいるにも関わらず、頭の中はとても冷静なのだ。

何を考えよっかな。人生のこととか?あーそれとも今日のnoteのこととか?そもそも運動中って考えなくてもいいことが一つの魅力なのに、こんなに考えちゃってるの良くないよなぁ。でも良くないよなってことを考えてるのが、もう良くないんだよなぁ。あー、ヒマだな。

そんなこんなで30分が経ち、僕はプールから出た。タオルで体を拭きながら、いつもよりも重い重力に耐える。着替え終わって、水筒のお茶を飲む。うむ、うまい。水泳後の飲み物のうまさは異常なのだ。外に出ると心地よい風が、乾ききっていない髪にぶつかる。意外と涼しいもんだな。そう思いながら、僕は自転車にまたがった。夏の終わりがすぐそこにある気がした。

プールは僕にとって不思議な場所だ。体も動かすし、頭も動かす。なのになんか心地よい。疲れすら心地よく感じる。水の中は世界とは断絶されたようで、でも長くはいられない。そのもどかしさに夢中になり、何度も何度も、水に潜ろうとしてしまう。海も良いけど、少しうるさい。僕は誰もいないような、あのプールの水の中に、虜になっているのだ。