生きるのが下手くそなエッセイ

人生に悩みまくりの僕カシコが、エッセイやコラムを気が向いたときに書いていきます

文字が滲む

子どもたちと接することがある。なんてことはないのだけれど、数分間話をしたり、ちょっと手伝ったりするようなことがある。今までを振り返ってみると、なんだかんだ子どもたちと触れ合う機会を絶やすことなく、生きてきたりした。それは仕事だったり、プライベートだったり様々だけど、なぜか気がついたら、自分よりいくらか年下の子たちと話す機会に恵まれていた。

今もそうだ。それを求めていたわけではないのだけれど、結果として子どもたちに触れ合う環境にいる。ただ僕は別に子どもが得意というわけじゃない。話したり、遊んだりするのは楽しいんだけど、どう接していいかわからないまま、今日まできている。

でもなんで、僕は子どもたちから離れることがないのだろう。接し方がわからない、何を話せばいいのかわからない、そんな出会いをなぜ求めてしまうんだろう。そんな矛盾が心の片隅に置きっぱなしになっている。わからないなと思ったまま、この間もまた子どもたちと接した。

難しいことはしていない。話す内容も決まっているし、やることも決まっている。言われた通りに子どもたちに接しただけだった。ただ一つ、ちゃんと人間として向き合って接しようとした。子どもたちへの接し方がわからない僕は、人間として対等に接しようとすることでしか、子どもたちに向き合うことができない。それでもそれしかできないから、それを精一杯やった。

後日、紙が渡された。一枚の紙だった。なんてことない感想のアンケートだった。いつもならまとめて渡すようなその紙なんだけど、わざわざ僕に一枚だけが差し出された。「これカシコさんじゃない?」そこには文字が書かれていた。

「あの男の人の話が心に残った。」

あぁそうだった。こういう瞬間があるんだ。対等に接しているとちゃんと対等に接してくれるのだ。自分の必死な思いを、真正面から受け入れてくれるのだ。だから僕はきっと、子どもたちと向き合うことをやめないんだと思う。わからないけど、わからないなりに彼ら彼女らに向き合いたいんだと思う。

気づいたら、その文字が滲み始めたので、僕はとっさに顔を隠した。