生きるのが下手くそなエッセイ

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「裁判科学」という新しい切り口:海外ドラマ『BULL』が面白すぎた

海外ドラマをあなたは見るだろうか。僕は見る時期と見ない時期の波がある。ここ数年は、あまり見ることがなかったのだが、ステイホームを楽しむため、最近また海外ドラマに手を出し始めた。それがこの作品。

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昨日から見始めたのだが、気づいたら4話まで一気に見ていた。完全に寝不足で、今日の仕事は大変に辛かった。でも後悔はない。

だってこのドラマ、めちゃめちゃ面白いから。

【注意】筆者はまだこのドラマを4話までしか見ていませんが、あまりにもこのドラマが面白かったので衝動的に執筆しています。なので、今後見進めた時に全然違うことになっていたらごめんなさい。

裁判ドラマだけど弁護士じゃない主人公

『BULL』は裁判もののドラマだ。裁判もので有名な海外ドラマといえば、最近日本でもリメイクされている『SUITS』が挙げられるだろう。

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このドラマも僕は大好きで、そもそも海外ドラマにはまるきっかけの一つだった。内容に関しては省くが、『SUITS』は弁護士たちを主人公にした作品だった。
では、『BULL』はどうだろう?
弁護士が主人公?
もしくは検事?
それとも警察?

答えは全てNo


正解は審理コンサルタントだ。


は?

これを読んでいる多くの人がそう感じただろう。僕もその一人だった。ドラマの一話が始まって早々、この言葉が出てきたからだ。
だが主人公であるブルはこの言い方を嫌っているらしく、こう訂正させた。

裁判科学、と。

面白さ1:裁判科学と陪審員

アメリカの裁判では陪審制が用いられている。

陪審制(ばいしんせい、英: jury system)は、刑事訴訟や民事訴訟の審理に際して、民間から無作為で選ばれた陪審員(ばいしんいん)によって構成される(裁判官を含まない)合議体が評議によって事実認定を行う司法制度である。陪審員の人数は6~12名である場合が多く、その合議体を「陪審」という。陪審は、刑事事件では原則として被告人の有罪・無罪について、民事事件では被告の責任の有無や損害賠償額等について判断する。
wikipediaより引用)

ものすごい簡単にいうと、ランダムに選ばれた市民12名程度が、罪を決定するということだ。
その制度に対してブルは、心理学や統計学という「科学的」なツールを用いながら、陪審員の動きを予測し、自分たちのクライアントが勝てるように審理を進めていく。これが裁判科学だ。
ブルはTACという会社を経営し、いくつもの裁判に対して、この裁判科学を用いることで勝利を得ているというわけだ。

じゃあ具体的にどんなことをしているのかというと、最も特徴的なのが、模擬裁判だ。これは通常の海外ドラマの場合、ロースクールや事務所内の練習などで行われる、裁判の予行演習みたいなものだ。しかし、『BULL』では、この模擬裁判がとても重要になってくる。
ブルたちは、彼らが持つ独自のアルゴリズムを用いて、実際に担当する案件で選ばれた陪審員と、そっくりな陪審員たちを召集する。
そして、そのそっくり陪審員たちを前に、自分たちが展開する予定の証拠や、弁論を披露し、模擬裁判を行う。これによって、今の自分たちのやり方で勝利を掴めるのか、さらには足りないならば、どの陪審員を攻略すべきなのか、というプランまで立てることができる。

ここに『BULL』一つ目の面白さがある。これまでのドラマではあまり着目されることのなかった陪審員という存在が、フォーカスされるからだ。さっき引用したように、陪審員たちは一般市民だ。凄腕の弁護士や、キャリアの検事でもない。つまり彼ら彼女らは、『BULL』を見ている視聴者と重なる部分がある。そんな陪審員を説得するためのブルたちの攻略法は、僕たちにも刺さる。陪審員の中にも様々な人がいて、その人たちを段階を踏んで説得していくのだ。どこかの段階で、自分と似た人物が説得されたとき、なるほど、とうなずいてしまう。毎回、陪審員というラベルで一括りにせず、その中の個人まで深掘りをしようとする作品を、僕はこれまで見たことがない。

面白さ2:各話ごとのテーマと社会

『BULL』二つ目の面白さは、各話ごとのテーマだ。まだ現状4話までしか見ていないが、これまでのテーマがとても社会的な問題との結びつきが強く感じられるからだ。簡単に書くと

1話:親子問題
2話:男尊女卑のステレオタイプ
3話:メディアとフェイクニュース
4話:裁判制度と地域性

このようになっている。見て貰えば分かるとおり、かなり責めていると感じるのは僕だけだろうか。このドラマは2016年から放送されているらしいが、その切れ味はかなり鋭い。特に2話が印象的だった。

クライアントの女性を助けようと、コンサルを請け負うブルだが、模擬裁判をしたところ5回中5回敗北をしてしまう。ただ、ある条件を一つ変えるだけで、6回目には勝利を得る事ができた。その条件とは、被疑者(クライアントの位置)を女性から男性に変えたことだった。

どうだろう。僕は正直震えた。開始2話目でここまで真正面から、男尊女卑のステレオタイプに挑む作品は見た事がなかったからだ。日本の作品でも露骨に女性が差別されている様子だったり、男性が有意的な立場にある様子が描かれている様は見かける。だが、誰も差別しているつもりはないのに、起こってしまう差別を捉え、立ち向かった作品はどれだけあるだろうか。僕が日本のドラマをあまり見ていないのもあるとは思うが、そのテーマをここまで真正面から描いたものは少ないのではないだろうか(もちろん日本にもあるはず、あって欲しい)。
そんな繊細なテーマにも関わらず、『BULL』ではこれをエンターテイメントとしていい意味で昇華していると感じた。社会問題に切り込みながらも、エンターテイメントとしての側面を忘れない、そんな面白さがこの作品にはある。

面白さ3:チームのメンバー

今まであげた面白さは、『BULL』ならではという部分だったが、ドラマで忘れちゃいけないのが、キャラクターたちの存在だ。もちろんこの作品でも、クセがありつつもハマってしまう、そんな素晴らしいキャラクターたちが溢れている。全員を紹介すると時間がかかるので、僕の好きな数人を紹介しようと思う。

ベニー:元凄腕の検事。現在は弁護士として、TACで働いている。基本的に模擬裁判での弁護士を担当しているが、実際の法廷で戦うこともある。ブルの元妻の弟ということもあり、彼との信頼は厚い。TACで練られた戦略に加え、彼の弁護士としての腕で、陪審員たちを説得していく。彼が陪審員たちに話しかける最終弁論では、彼の実力とブルたちのチームワークが見事に組み合わさった訴えが心に響く。

チャンク:クライアントの衣装担当。元々ファッション業界にいたこともあって、めちゃめちゃオシャレ。陪審員たちにクライアントの印象をよりよく見せるように、衣装という方法で裁判にアプローチしている。彼の選ぶ服のセンスももちろんだが、クライアントに寄り添いながらも、しっかりと芯の通ったその仕事姿はまさにプロフェッショナルだ。

ケイブル:チームの情報担当。ラフな格好で机に座ったり、イヤホンしながら仕事をしている、チームでは最年少かな?ただその仕事っぷりは素晴らしい。必要な情報はどんな手を使ってもあつめ、クライアントに有利な世論になるように、情報を拡散することもできる。ハックからSNSまで、彼女の技術を前に、手に入れられない情報は存在しないと感じさせる。

という風に、個性的なメンバーが勢揃いのチームになっている。こんなメンバーをまとめる事ができるブル自身もとても魅力的な人物だし、チームとして集まったときの団結力も素晴らしい。ちなみに雑談シーンもたっぷりあるので、チームのメンバーを見ているだけでも十分に楽しい作品となっている。他の作品に負けず劣らず、魅力的なキャラクターも この作品の面白さの一つと言える。

最後に

ここまで『BULL』の面白い点を3点に渡って紹介してきた。
ただ正直、他に面白い部分はいくらでもあるから、ぶっちゃけ見るのが一番早いと思う。

この作品では、主人公たちは基本的に社会的正義を助けようとする。例えば、殺人容疑をなすりつけられた女性や、大手企業に言われのないことで訴えられている学生、世間から批判されているパイロットなどだ。その中には無料で請け負っている案件もある。正義のために、チームで戦う。ある種のヒーロー物とも言えるかもしれない。ゆえに、最後のシーンでの勝利はとてつもない爽快感だ。それは、ブルが仕掛けたトラップが物語序盤から少しずつ動いていく感覚も関係しているだろう。

どちらにせよ、このドラマが最高に面白いことは間違いない。1話完結で、現在も継続中のドラマだ。なんとPrime Videoでシーズン3まで見る事ができる。これを見ずして、ステイホームを楽しむなんてあり得ない。一度見ればあなたも『BULL』の面白さに「完敗」すること間違いなしだ。